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悦びの白い湯気

ナチュラっ子は、ばら組(年長クラス)になったら食育担当のスタッフと「おむすびの会」に参加します。
普段は縦割り、というより、自由で流動的な集まり(又は個人)で活動する事が多いナチュラっ子たちですが、この「おむすびの会」はばら組だけの会です。
お米と繋がる。自然と繋がる。自分と繋がる。感覚を研ぎ澄ませてご飯を炊く為の一つ一つの行為を体験していく時間です。

今回のお当番も前回に引き続き「おむすびの会」の日でしたが、おむすびの会自体に参加するのは初めてでした。
今日はコンロや鍋を各自持って来て、自分のご飯を炊く初めての日。想像していた静かなおむすびの会とは違い、次なるステップを踏める悦びと興奮がうごめく空間がそこにはありました。
エプロンや三角巾など身だしなみのチェックを済ませたら、胸に手を置いて自分と繋がる瞬間。かと思いきや、Aはお尻を上げて座りたくなさそうにもじもじ…どうしたのかなぁ…何かあったのかな…と不思議な時間が流れた直後、Fから「そこに座りたくないんじゃない?」と。
テーブルの向こう側にはS(男児)、F(女児)、H(女児)、と並んでる。どうやら、ばら女子と並んで座りたかった様子。Hが少しずれてFも少しずれてSとFの間にAが座りようやくスタート

お米を測ってボールに入れる。慎重に、こぼさないように。長滝で出来たお米を優しく触ってその感触を確かめる。両手で米を掬い上げ香りを嗅ぐ。中には生のお米を食べる子も。
やさしい。あまーーい。いい匂い。
子どもたちの口からお米の触感(食感)や香りの感想が溢れる。自粛期間中、長滝に住むナチュラっ子たちが地元の方々と一緒に田植えし、みんなで稲刈りしたお米がこうして目の前にある。全てが繋がっているんだ。

ボールに水を注ぎお米を洗う。優しく、愛でるように洗う。お米を触ったり洗ったりしている間、子どもたちはみんなずっとしあわせに満ちた笑顔だ。
そして洗ったお米を鍋に入れたら水を測って加えコンロに火をつける。土鍋の蓋にある穴には菜箸を挿すのを忘れずに。
火をつけた頃から子どもたちの表情に真剣さが帯びてきた。じっと自分の鍋を見つめる。
鍋がぐつぐつ言い始めるのを静かに待つ時間が訪れた。しばらくしたら白い湯気が溢れ始め、スタッフの言葉通り“湯気の香りを嗅ぐ”子どもたち。
なかなかぐつぐつしないので、何度も蓋を開けてしまう子。じっと待つ子。まだ?まだ?と何度も確認する子。
鍋と蓋の隙間からわずかに溢れる白い湯気に集中し、ぐつぐつを感じたらその顔に何とも言えない笑みが溢れる。
ぐつぐつし始めたら弱火にして、また暫く待つ時間。その間も湯気の香りを嗅いでは「いい匂いになってきた!」と鍋の中のお米のように気持ちが踊りだす子どもたち。

みんなのご飯が炊けたら、それぞれのご飯をみんなで少しずつ味見。私もばら組6人のご飯を食べ比べ。ご飯の味よりも、なによりも、この子どもたちの笑顔が全て。自信と充実感に満ち溢れている。

そこからは「結び」の時間。
手水と塩など必要な物をそれぞれ躊躇なく準備して塩を選ぶ!それぞれ好みの塩があるらしく、迷いなく選んでいく子どもたち。
塩の違いが分かる6歳児に驚きを隠せない私。

慣れた手つきでまんまるのおむすびが出来上がった。正真正銘、自分だけのおむすび。
みんなと協力して炊くご飯も美味しくけど、自分だけのご飯。世界に一つだけのおむすび。
「いただきます」と同時に口に運ぶ。

みんな嬉しそう。緊張が解け、大声で話しだすばら組のみんな。またここから始まるのね。
「いってらっしゃい」

年中児保護者 クーチェ


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