10月に入ってすぐ、スタッフゆかさんより
「Oが、Sと私のところに来て、"よるのもりのようちえん"がしたい!って言ってきてさ。
その話をしている間、年少ののいちご組さんが身の回りのことでゆかに助けを求めて来た時、Oがやるから!と身辺整理を率先して手伝ってくれてたよ。」
ええー?!!いろいろとびっくり。
ゆかさんは、Oの
"やりたい、やってみたい"に
寄り添い、そして快く返事をしてくれました。
その日から
日にちをいつにするか、時間はどうするか、持ち物は?気をつけることは?…
最初はOとSで話していたことが、年長のばら組みんなも実行委員となってくれて
毎日のようにメンバーにゆかさんを交え、話し合っていたそう。
わたしにもうれしそうに、よるのもりのようちえんしたいねん!思いついてゆかさんに言ってみてん。と、
いつもの会話よりも心なしかイキイキと、力強く話していたのが印象的です。
夜は暗いからランタンがいるで、ヘッドライトにしようかな。
イノシシとかシカが出てくるかもしれん。
ママは来る?来ても来なくてもどっちでもいいよ。
普段すごく怖がりなOからは、想像できない言葉の数々。
怖くないの?と聞くと、怖くないよ。楽しみ!!とまたハッキリした言葉が返ってきた。
当日を迎えるまでのプロセスを大事にしてくれるゆかさん。
こどもたちが主体となって、集合時間や準備物を考えて決めていく。そのサポートしてくれる。それが、Oの毎日の言葉や様子から伝わってきました。
自分のやりたいに本気で寄り添ってくれる大人と仲間たち。言葉に、力強さと安心感がありました。
そして迎えた当日、天気は良かったけど、つめた〜い風の吹く寒い日。
始まりの会では、照れて、フードに顔を隠しながら話すO。Sが、よるのもりのようちえん、はじめまーす!!と大きな声で呼びかけてくれた。
みんな元気かな?いつものようちえんのように一人一人確認して、こどもの数、大人の数も数える。
ばら組のペースで、バラバラしつつも、みんなのサポートを受けてなんとか進める。
ばら組みんなが今日までに話し合い、
やると決めたことは
「焚き火、夜の森の散歩、遊ぶ。」
実はこの日、
お気に入りの、アイアンマンのトレーナーで行く!と言いだし、寒いから上着は?と聞くと、
「いらない!」
森に入るのにお気に入りの服汚れてもいいの?
「いいよ!」
という会話があり…
始まりの会が終わったあと、
ばら組男子3人はOを中心にアイアンマンごっこ。走り回って遊び出す。
その姿を見ていて
あれ、焚き火の火起こしとかせんの?
散歩はいつから始まるのかな、、
と、企画した人そんなんでええの?何しに来てん…と、ちょっとモヤモヤした気持ちになる。
でも、毎日楽しみにしてきたよるのもりのようちえんがついに始まった喜びや楽しさが溢れているようにも見えて、そのまま見守る。
その後わたしがちょっと他に目をやった瞬間、
誰かの「Oがコケた!」という声と同時に大きな泣き声が聞こえてきた。
振り返ると、水たまりでコケたらしくお気に入りのアイアンマンの服がドロドロになった大泣きのO。
わたしは笑ってしまった。
そして撮影。笑
いやだーーー!つめたいー!!寒いー!!と叫びながら泣く。
お気に入りの服着て行っていいの?寒いで?って言ったやん!!っていつもなら怒ってしまうような場面でしたが、言わなくても全部身体で心で感じてるやろうなと思い、うれしくてソワソワしててコケること、あるよな。
悲しくて、どうしようもなく悔しくて泣き叫びたくなる気持ち、わかるな〜となんか微笑ましく思えてきました。
Sは、Oの名前を呼び、(やっちゃったね、というような絶妙な表情で)肩にポンと手を置いて頷く。「着替え持っててほんと良かったなぁ。」と話しかける。
ふふっと笑えてきて、また微笑ましい気持ちになる。
ばら組女子達がやってくれていた火起こしは少し苦戦。
杉葉を集めたり、風を身体で防いだりしながらこどもと大人で力を合わせてついた火は大きな火になって、みんなを暖めてくれました。
夜はいつも以上に火のありがたみを感じる。
年中さんが持ってきてくれた干し芋を火で炙りながら食べたり、ようちえんの活動中にばら組を中心に自然のもので作ったおうちを見に行ったりと、それぞれに楽しい時間を過ごす。
15時に集合した時は明るかった長滝広場が、日が暮れて少しずつ暗くなりはじめる。
太陽が沈み木の隙間に光が見える。
16時半を過ぎた頃、ついに夜の森へ散歩に行こう、と集まり出した。
ばら組のみんなを中心に散歩に行く人、手を挙げてー!と声がかかり、散歩に出るこどもと大人が集合。
わたしも、どうしてもこどもたちと一緒に夜の森を感じてみたくて生後半年の娘と共に森へ入る。
いつもの長滝広場が、違ったように見える。
こどもも大人も、ワクワクドキドキ。
「ここ、気をつけて!」「見える?」
「大丈夫?」「こっちの道の方が安全やで!」
「あ!きのこがある!」
みんなで声をかけあって進む。
ばら組みんなが先頭で、みんなをリードするように歩いていく。
歩みを進める度にだんだんと森が暗くなっていく。夕方と夜の間のなんとも言えないうす暗さ。
森の中の、寒く澄んだ空気感。
ランタンの光が美しく浮かび、気づけば沈みかけていた太陽が居なくなり、月がきれいに見えている。一瞬一瞬、現れる美しい景色にわたしは心が震えた。
その時近くにいる人や、ずっと抱っこ紐から静かに景色を眺めている娘と、会話しながら進むのも、とても楽しかった。
険しい森を歩き、出発地点へ戻る頃には、辺りは真っ暗。
さっきまで歩いてきた森を振り返るともう何も見えないほど暗闇になっていた。
ここでも焚き火の明かりにホッとして、待ってくれていたメンバーに会ってホッ。
無事に全員帰ってきたことにも本当にホッとした。
帰ってきて、わたしはひとりのばら組の子のお父さんと会話をした。
「これってばら組のこどもたちが企画したこと?」と聞かれたので、「そうです。こどもたちが企画したことに本気で寄り添い楽しんでくれる大人や仲間たちがいるって本当に幸せですよね…」と言ったら「いや〜!!ほんとですね!!ここのようちえんでほんとによかったー!!」と、そのお父さんは大きな声でうれしそうに言った。
うん、わたしも本当にそう思う。
O、やりたかったことが実現して良かったね。
やりたいことに本気で寄り添い、そのプロセスを楽しみ、そして真剣に見守ってくれる信頼できる大人がいてくれて、
ばら組の仲間たちとともに取り組めたこと、楽しかったし、心強かったね!
ようちえんのみんなも集まってくれて、より楽しくなるように一緒に考えてくれるってうれしいよなぁ。
来れない子達もみんな心を寄せてくれていたね。
お母さんだけでなくお父さんたちもたくさん来てくれて、こんな風に一人のやりたい!にみんなが集まってくれる。
この体験はきっと、ずっと彼の中に残るんじゃないかな。
ばら組みんなが初めて企画した「よるのもりのようちえん」当日までのプロセスと、この日の体験が、みんなにとって強い心の根っこになっただろうな。
みんなが大人になっても、あの時の森、楽しかったよな〜って笑いあえるようなドキドキワクワクの体験だったような気がしています。
わたしにとっても、宝物みたいな幸せな日になりました。
みなさん、本当にありがとうございました。
年長保護者 ちかやん
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